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弓について

 確か武満徹でしたか、何かの本で「音楽で最も大切なものは空気と木だ」みたいなことを言ってました。空気がなければ音は出ない。木、と言いきっていいかわからないけれど(おそらく人間が最初に使った楽器は声か打楽器でしょうね)、多くの楽器が木を含んでいることを考えると、振動は木によって生まれている。つまり音は空気と何かしら振動する物体(この場合、木)によって生まれると言えるでしょう。

 その場の空気、環境によって音の響き方は変わり、そして木によって、楽器本体によって鳴りは変わります。価値の高い弦楽器は何千万から何億なんてものまで。いやはや。職人が精魂こめて作ったものなんですから「たかが木」なんて簡単には言えませんね。

 しかし最近は「実は楽器本体よりも弓の方が重要で繊細なのではないか」と考えることもあります。弓は振動を起こすものであり、直接振動するわけではないのですが、「いい楽器>いい弓」とは必ずしも言い切れないのです。楽器は個性みたいなものがあって「この楽器、音はとんがっているけど良く鳴るんだよな」とか「音量は出ないけど丸くていい音なんだ」とか一長一短や相性がありますが、弓に関しては極端にいえば「いい弓」か「欠陥のある弓」に分かれる気がします。楽器は弦を変える、弦高を変える、部分的に材質を変えるとか色々と調整の手段があり、個人の相性にあわせてうまく行えば質も大きく向上することもありますが、弓に関してはそんなことはできません。せいぜい毛替えをする、くらいのものです。

 いい弓は良い状態の毛が揃っていれば欠点はありません。軽いのに木は強くて弾力もある。弦に吸いつくし、弦からの跳ねも早い。そうではない弓はどれだけ技術があってもできないことが何かしら出てきます。(本当にめちゃめちゃ上手い人ならわからないけど)

 こうなるといい弓だけが欲しくなりますが、さすがにそういうわけにもいきません。弓の原材料、フェルナンブコは既にブラジルから輸出は禁止され、新たなフェルナンブコが充分に育つまではあと数十年待たなくてはなりません。ただ欠陥がある弓の中にもある程度のランクはあることはあります。
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 ということで(?)、弓を二本売りにだしております。二つともフレンチです。
2006年パリの店で買った弓。買った時は600ユーロでリヨン製とのことでした。木はブラジルウッド。長さは平均。特にクセのある弓ではないと思います。試しにフレンチ弓を、ってな方や生徒や知り合いで安い弓を探している方はどうでしょう。一応売値は5万ですが交渉や条件等いくらでも受け付けます。
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もう一本はどうしても欲しいという方がいたら。ドイツのKarl Hermannという弓職人が作ったフレンチ弓です。(スタンプつきです)この人は1920年代前半には亡くなっているので弓自体は100年くらいは経っているでしょう。ただ弓のコンディションは「悪くない」とか「しっかりしている」とかではなく、「最高」です。元々チップ等が傷んでいる物を購入して見事に修復してもらいました。さらにチップは現在、入手困難な象牙が使われております。よく跳ねるし、バランスもよく、デタシェの奏法に良く向いていると思います。ちょっと木は太めですが、見た目よりもずっと軽いです。こちらは15万で考えてます。「いい弓」ですし、愛着もあるし、どうしても売りたいわけでもないんで、価格はたぶん動かないと思います。今後自分が使用する機会が少ないのはもったいないし、大事に使ってくれる人がいるなら、と思って紹介しました。(こちらは写真とってません。連絡あればいつでもお見せします)

興味がある方はぜひご連絡を
by epiphany0523 | 2014-03-20 01:06 | ひとりごと